ビデオ通話は対面の代わりになるのか
コロナ禍の高齢者10,523人を1年間追跡 — うつ症状との関連を検証
ビデオ通話は対面の代わりになるのか
コロナ禍の高齢者10,523人を1年間追跡 — うつ症状との関連を検証
新型コロナウイルス感染症の流行は、対面での交流を強く制約し、高齢者の社会的孤立とうつ症状のリスクを高めました。その中で期待を集めたのが、ビデオ通話です。表情・身振り・声色まで伝わるビデオ通話は、対面の代替手段として高齢者のメンタルヘルスを支えうるのか――。
私たちは、全国高齢者コホート研究 JAGES の縦断データ10,523名(65歳以上)を用い、2019年(コロナ前)と2020年(コロナ禍)の1年間における3つのコミュニケーション手段の頻度変化と、その後のうつ症状発症との関連を解析しました:
対面接触 (人と人:直接)
音声通話 (人と人:電話)
ビデオ通話 (人と人:オンライン)
主要な結果
対面接触の維持・増加は、うつ症状の発症リスクを有意に低減しました(維持:リスク比0.92、増加:0.84)。この結果は、対面のつながりが持つ保護的役割が、パンデミック下でも変わらず重要であったことを示しています。
ビデオ通話の増加については、保護効果を示唆する興味深いパターンが見られました:
軽度のうつ症状の発症リスクを有意に低減(GDS-15≥4で、リスク比0.89)
重度のうつ症状の発症リスクを大きく低減(GDS-15≥10で、リスク比0.71)
65〜74歳ではうつ症状発症を有意に低減(リスク比0.80)
一方、音声通話の変化はうつ症状とは関連が見られず、ビデオ通話の「映像を伴うリッチな対話」という特性が、メンタルヘルスへの寄与に重要であることが示唆されました。
ただし課題も
75歳以上ではビデオ通話の保護効果は明確でなく、デジタルスキルや機器への不安が恩恵享受の壁になっている可能性があります。また、誰と話すか(家族か友人か)、どのような内容かといった質的側面は本研究では捉えきれていません。
含意
対面のつながりは、デジタル化が進む社会でも代替困難な価値を持ち続けます。しかしビデオ通話もまた、特定の条件下で対面を補完する有力な手段になりうることが、本研究の重要な発見です。鍵となるのは、「置き換える」のではなく「補完する」――どのような人に、どのような状況で、どのような使い方をするとビデオ通話がうつ症状を防ぐのか。この問いの精緻化が、デジタル時代の高齢者メンタルヘルス戦略の鍵を握ります。
Shioya R, Nakagomi A, Ide K, Kondo K. Video call and depression among older adults during the COVID-19 pandemic in Japan: The JAGES one-year longitudinal study. Social Science & Medicine. 2023;321:115777. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S027795362300134X