インターネット利用は高齢者の何を支え、何を支えないのか
34指標を3波パネルで検証 — 4,232人のアウトカムワイド分析
インターネット利用は高齢者の何を支え、何を支えないのか
34指標を3波パネルで検証 — 4,232人のアウトカムワイド分析
「インターネットを使えば健康になれる」と単純に言えるのか――この問いは、デジタルディバイド研究の核心です。私たちは、全国高齢者コホート研究JAGESの3波パネルデータ(2013・2016・2019年)を用い、インターネット利用が3年後の健康・ウェルビーイングに与える影響を、アウトカムワイド分析で包括的に検証しました。
アウトカムワイド分析(Outcome-Wide Analysis)とは、Tyler VanderWeele教授(Harvard)らが提唱した疫学手法で、ある要因が複数領域のアウトカムに与える影響を一度に評価します。単一アウトカム研究で生じる出版バイアスやp-hackingの問題を回避でき、要因の全体像が見えやすいという特徴があります。本研究では、身体・認知健康、心理的苦痛、主観的ウェルビーイング、社会的ウェルビーイング、向社会的行動、健康行動の6領域・34指標を同時検証し、Bonferroni補正で多重検定にも対応しました。
主要な結果: ほぼ毎日インターネットを使う高齢者は、3年後に以下の点で良好な状態にありました。
手段的日常生活動作 (IADL) の維持
スポーツグループへの参加頻度の増加
友人との対面接触頻度・人数の増加
健康診断の受診率の向上
これらの結果は、インターネット利用の恩恵が主に社会的つながりを介した経路で健康に作用することを示唆しています。同時に、こうした恩恵を享受できるのは利用できる人に限られる――この事実こそが、コロナ禍で広がった高齢者のデジタルディバイド、そして新たな段階である**AI格差**を私たちが解明し続ける理由です。
なお、本研究で確立したアウトカムワイド分析の枠組みは、現在私たちが進めている**AIとウェルビーイング研究**にも引き継がれ、AIが健康・ウェルビーイングに与える多面的影響の検証に応用されています。
Nakagomi A, Shiba K, Kawachi I, Ide K, Nagamine Y, Kondo N, Hanazato M, Kondo K. Internet use and subsequent health and well-being in older adults: An outcome-wide analysis. Computers in Human Behavior. 2022;130:107156. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0747563221004799