ひとりではなく、仲間と歩く — デジタル・ピアサポートの効果
40クラスタ・156名のクラスタRCT — 12週間の歩数変化を検証
ひとりではなく、仲間と歩く — デジタル・ピアサポートの効果
40クラスタ・156名のクラスタRCT — 12週間の歩数変化を検証
アプリで「ひとりで歩こう」と促されるのと、「仲間と一緒に歩こう」と促されるのとで、本当に高齢者の歩数は変わるのでしょうか――。これは、私たちが mHealth 研究において追求してきた中核的な問いです。身体活動の継続には他者との関係性の中に組み込まれる仕掛けが必要なのではないか。本研究は、その仮説を直接検証するクラスタランダム化比較試験(クラスタRCT)です。
研究デザイン
2地域で、60歳以上の地域住民156名を40クラスタ(3〜5名のピアグループ) に編成し、ランダムにアプリ群と対照群に割り付けました。両群とも基礎的なスマートフォン教室を受講した上で:
アプリ群: 「みんチャレ(Minchalle) 」というデジタル・ピアサポートアプリを使用。3〜5名のグループで日々の歩数目標を共有・写真や応援メッセージを投稿し、相互に励まし合う設計
対照群: 通常のスマートフォン教室(LINEや地域情報アプリの使い方等)
主要な結果
12週間後、アプリ群は対照群と比較して、1日あたり平均歩数が有意に多く増加しました(差: +579歩、95%CI: 36–1123、p=0.04)。
興味深いのは、効果が11〜12週目に最も明確に現れたことです。一般にアプリの「新規性効果」は使い始めに最大となり時間とともに減衰しますが、本研究では逆のパターンが観察されました。これは、新規性ではなく目標設定・自己モニタリング・仲間からの強化が時間をかけて自己効力感を高め、歩く習慣を形成したことを示唆しています(社会認知理論との整合)。
80歳以上で効果がより大きい
探索的な年齢層別解析では、80歳以上の参加者でアプリの効果がより顕著でした(週12時点で1,000歩以上の差)。デジタルディバイドの最も深い層と言われる超高齢者にとって、ピアサポートが個人化アプリを使う力を補強する可能性が示唆されています。
合わせて伸びた、スマホ利用の幅
歩数だけでなく、アプリ群では毎日のスマートフォン利用率(OR=4.10)と利用目的の幅(+0.58種類)も有意に増加しました。デジタル・ピアサポートは身体活動を促すと同時に、高齢者のスマートフォン活用全般を底上げする入り口にもなりうる――いわばデジタル格差の縮小と健康増進が同時進行する介入です。
「ひとりで使うか、仲間と使うか」という問いへの答え
――mHealth は「ひとりで使う」設計だけでは十分でなく、つながりの中で使われる設計こそが、特に最も支援が必要な層に届く。これは、デジタル時代に取り残されない健康戦略の鍵となる発見です。
Nakagomi A, Abe N, Ueno T, Izuka G, Kawasaki Y, Kondo K. Digital Peer Support to Increase Walking Among Older Adults: Cluster Randomized Trial. Journal of Medical Internet Research. 2026;28:e75708. https://www.jmir.org/2026/1/e75708