アプリは高齢者の社会参加を増やせるのか
「社会参加のすゝめ」アプリの12週間RCT — 181人で検証(産学連携)
アプリは高齢者の社会参加を増やせるのか
「社会参加のすゝめ」アプリの12週間RCT — 181人で検証(産学連携)
「健康のためにもっと社会と関わりましょう」――この一見シンプルなメッセージを、スマートフォンアプリは本当に行動変容につなげられるのでしょうか。私たちは日立製作所との産学連携により、社会参加を促すアプリ「社会参加のすゝめ(Encouragement of Social Participation: ESP) 」を開発・実装し、その効果をランダム化比較試験(RCT)で検証しました。
研究のデザイン
60歳以上のコミュニティ在住者および web パネル参加者181名を、ESPアプリ群と対照群(歩数記録アプリのみ)に無作為に割り付け、12週間追跡しました。ESPアプリは、社会参加の自己モニタリング、個別化されたフィードバック、ゲーミフィケーション要素(レベル制)、社会参加の意義に関する教育的コラムを統合した、行動変容理論に基づく設計です。
主要な結果
社会参加の頻度はアプリ群で有意に増加しました(調整後の差: +3.03回/2ヶ月、95%CI: 0.17–5.90、p=0.04)。特に:
趣味活動への参加が有意に増加(+0.82回)
文化サークルへの参加が有意に増加(+0.65回)
一方、歩数(週あたり平均)については群間差は認められませんでした。ただし介入3〜7週目には、アプリ群で歩数が一時的に多い時期も観察され、新規ツールの初期動機が物理的活動にも波及した可能性が示唆されました。
誰に効きやすいか
サブグループ解析では、70歳以上の女性、学歴が高校以下の層、コミュニティ経由で参加した層で、アプリの効果がより大きい傾向が見られました。これは、それまでデジタル健康ツールに触れる機会が少なかった層こそ、適切なデザインのアプリから恩恵を受けうることを示唆しています――mHealthが健康格差を縮小する側に作用しうる可能性です。
含意と今後
本研究は、適切に設計されたmHealthアプリが、高齢者の社会参加を実際に増やせることを実証しました。
Kawaguchi K, Nakagomi A, Ide K, Kondo K. Effects of a Mobile App to Promote Social Participation on Older Adults: Randomized Controlled Trial. Journal of Medical Internet Research. 2024;26:e64196. https://www.jmir.org/2024/1/e64196