インターネットは認知症を防ぐのか — 効果は誰にどう届くのか
Causal Forestで解き明かす効果の異質性 — 5,451人を5.5年間追跡
インターネットは認知症を防ぐのか — 効果は誰にどう届くのか
Causal Forestで解き明かす効果の異質性 — 5,451人を5.5年間追跡
「インターネットを使えば認知症を防げる」――先行研究はこの平均効果を示してきました。しかし、その恩恵は本当にすべての人に等しく届くのでしょうか。私たちは、全国高齢者コホート研究 JAGES のデータ5,451名(2013→2016→2022年)を用い、Causal Forest という機械学習アルゴリズムを駆使して、インターネット利用が認知症発症に与える影響の**個人差(効果の異質性)**を解明しました。
Causal Forestとは
従来の異質性解析は「年齢で分けて見ましょう」「性別で見ましょう」と、研究者が事前に変数を選んでから個人差を調べる演繹的アプローチでした。これに対しCausal Forestは、31変数すべてを同時投入し、機械学習がデータから自律的に「効果が大きく出る人/出ない人のパターン」を発見する帰納的アプローチです。複数の要因が複雑に絡み合う交差性(intersectionality)を捉えられることが特徴です。
主要な結果
平均としては、インターネット利用は認知症リスクを約30%低減(リスク比0.71)と関連していました。集団寄与割合(PAF)は18.6% ── 喫煙(14.1%)や身体不活動(4.2%)を上回る大きさです。しかし、その恩恵は均一ではありませんでした:
中程度の所得・教育水準・地域人口密度の組み合わせで恩恵が最大
高所得かつ低教育の層では恩恵が小さい(資金はあっても活用するスキルが伴わない)
社会的・身体的に不活発な人 (社会参加が少ない、外出が少ない、友人接触が少ない)で恩恵が大きい (インターネットが代替的な認知的刺激を提供する可能性)
含意
この結果は、インターネットの普及を一律に進めても、健康格差は縮小するとは限らないことを示しています。資金があってもスキルが伴わなければ恩恵は届かず、逆に「使えるはずなのに使わない」層には届かない――デジタルディバイドの「翻訳」段階(社会的地位が健康に変換される経路)で、新たな不平等が生まれているのです。
このような効果の異質性こそが、AI格差ページ で紹介している RTA(再分配・翻訳・蓄積)フレームワーク の「翻訳(Translation)」段階で起きている現象そのものです。
Nakagomi A, Kondo K, Shiba K. Heterogeneity in the association between internet use and dementia among older adults: A machine-learning analysis. Archives of Gerontology and Geriatrics. 2025;136:105912. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0167494325001694