AIは格差を縮小するのか、再生産するのか
AIが健康格差を再生産するメカニズムを解明する
AIは格差を縮小するのか、再生産するのか
AIが健康格差を再生産するメカニズムを解明する
私たちは、AIが健康格差を形成・再生産するメカニズムを整理する理論枠組みとして、RTA(再分配・翻訳・蓄積)フレームワークを提案しています。
再分配(Redistribution) — AIは教育・雇用・所得など、健康に影響する資源と機会の分布を書き換えます。それと同時に、AIそのもの——高品質なツールへのアクセス、安全に使える環境、批判的に使う力——もまた、不平等に分配される新たな健康の決定要因となります。
翻訳(Translation) — 社会的地位が健康に変換される経路を、AIが変えます。アルゴリズムに埋め込まれた歴史的不平等、訓練データの偏りによる診断精度の差、AIが媒介する情報環境などを通じて、教育や所得が健康に影響する仕方そのものが変質します。
蓄積(Accumulation) — AIとの繰り返しのやり取りや制度的埋め込みを通じて、小さな初期差が時間とともに増幅し、優位と不利が累積していきます。近年の実験研究は、人がAIとの対話を通じて自身の判断が変容していることに気づかないまま、バイアスが蓄積しうることを示しています。
これら3つのメカニズムを通じて、AIは「新たな健康曝露」というよりも、健康格差を生み出す社会過程そのものを書き換える力として捉える必要があります。私たちは、このRTAフレームワークを軸に、実証研究、政策評価ツール(DIA: Distributional Impact Assessment)の開発、ガバナンス提言を進めています。
詳細はこちら: Nakagomi A. Artificial Intelligence and the Reproduction of Health Inequity. Journal of Medical Internet Research (preprint, 2026). https://preprints.jmir.org/preprint/98158
1万3千人の調査で判明:日本における生成AI利用率は21.3%。利用は若年・高学歴・高所得・デジタルリテラシーの高い層に偏在し、AI格差は「参入段階」から既に始まっている