社会インパクト評価とは

社会インパクト評価とは、ある事業や活動が社会にもたらす影響を定量的・定性的に評価する手法のことです。

この評価を通じて、事業や活動の社会的価値や意義を明らかにします。社会インパクト評価では、経済的な価値だけでは測ることができない社会的な価値の評価も試みます。例えば、人々のウェルビーイングの向上や孤独・孤立の解消といった社会的意義は広く認識されているが経済的な価値付けが難しい事業や活動について、その社会的な価値を測定し可視化することを目指します。

社会インパクト評価の方法

社会インパクト評価は次のような手順にしたがって実施します。

1. 評価の目的とスコーピングの決定

評価の目的を明確にし、評価の対象範囲を決定します。評価の目的は、評価を実施することで何をどのように明らかにしたいのか、その結果をどのように活用するのかなどを検討します。 

2. ロジックモデルの策定

事業や活動がどのようにアウトカムにつながるかを示すロジックモデルを作成します。ロジックモデルは、インプット(資源)、アクティビティ(活動)、アウトプット(結果)、アウトカム(成果)の因果関係を可視化するものです。これにより、事業や活動の目標と実際の成果の関連性を明らかにすることができます。

3. 評価するアウトカムの選定とアウトカム指標の設定

評価するアウトカムを選定し、それを測定するための指標を設定します。アウトカムは、事業や活動によって生じる変化や効果を指します。アウトカム指標は、そのアウトカムを定量的または定性的に測定するための指標です。複数想定されるアウトカムの中でも特にどのアウトカムに着目するのか、ステークホルダーとよく協議して決定します。

4. 金銭代理指標の設定

アウトカムの価値を金銭的に評価するための代理指標を設定します。金銭代理指標は、アウトカムの社会的価値を貨幣価値に換算するための指標です。社会インパクト評価の対象となる事業や活動の分野に応じて、適切に選定・適用します。

5. アウトカム指標のデータ収集

設定したアウトカム指標・金銭代理指標に基づいてデータを収集します。アンケート調査、インタビュー調査、既存の統計データの活用など、指標に応じて適切なデータ収集方法を用います。

6. 社会的投資収益率の評価

収集したデータを基に、事業や活動の社会的投資収益率(SROI)を計算します。SROIは、事業や活動に投入された資源に対する社会的価値の創出量を示す指標です。SROIの計算には、アウトカムの金銭価値と投入資源の金銭価値を比較します。SROIが1を超える場合は、投資に対して社会的価値の創出量が多いと判断することができます。

社会インパクト評価の意義

社会インパクト評価を行うことで、事業や活動の効果を可視化し、改善点を見出すことができます。PDCAサイクルを推進し、事業や活動の成長や発展に寄与します。また、評価結果を公表することで、事業や活動の社会的意義を示すことができます。ステークホルダーに対する説明責任を果たし、社会的な理解と支持を得ることにもつながります。

研究紹介

「健康無関心層を含めた行動変容の促進による心身の健康を維持・増進するサービス」の評価

戦略的イノベーションプラットフォーム(SIP)「包摂的コミュニティプラットフォームの構築」のサブ課題「健康無関心層を含めた行動変容の促進による心身の健康を維持・増進するサービスの開発」において、株式会社アシックスと株式会社emotivEが開発を進める、健康リテラシーを向上させ、各ライフステージにおいて自律的に健康行動を促すサービスの評価に取り組んでいます。